Speak Peace原書からの学び⑬:重要なのは選択への理解

このシリーズでは、非暴力コミュニケーション(NVC:Nonviolent Communication)を開発した、マーシャル・ローゼンバーグ氏の言葉を、彼の著書(原書)から抜き出し、私なりの解説を加えることで、英語と、非暴力コミュニケーションの双方を学ぶ機会を提供できれば、と思っています。

最近、まだ翻訳されていない、マーシャル・ローゼンバーグの著書、「Speak Peace」の読書会に参加していて、改めて、彼の言葉の持つパワーを感じているところです。

気になるフレーズ、心惹かれるフレーズだらけなので、それらを順番に取り上げていければなあ、と思っています。

重要なのは選択への理解

前回、自分自身が、失敗したと思ったとき、どんな態度で自分を教育するのか。責めたり、非難したり、ジャッジするのではなくて、mourning(悼む)して、自分のニーズにつながる、というお話をしました。

今回は、その背後にある「自己責任」の考え方を表現している部分を、ピックアップしました。

A very important part of Nonviolent communication is this recognition of choice at every moment, that every moment we choose to do what we do, and we don’t do  anything that isn’t coming out of choice.

 非暴力コミュニケーション(NVC)の、とても重要な部分は、この、毎瞬、毎瞬の選択への理解です。私たちが何をするのか、何をしないのか、私たちは選んでいます。この選択からこないものは、何もないのです。

Speak Peace(マーシャル・ローゼンバーグ著)

すべての行動、するも、しないも、自分が選んでいる。私たちには、この自覚がどれくらいあるでしょうか?そして、そもそも「選択がある」ということを理解しているでしょうか?

この直前の箇所に、同じことを、もう少し強い書き方で書いている箇所があります。

Very often we say things to ourselves like “ I had to do it: I had no choice.” That’s never true!

とても頻繁に、私たちは、自分自身に向かって「やらなければならなかった。他に選択はなかった」などと言いますが、それは、決して真実ではありません!

Speak Peace(マーシャル・ローゼンバーグ著)

That’s never true! に 、マーシャルの思いがこもっているように感じます。英語の話になりますが、that’s never 〇〇 (決して・・でない)は、使える表現だと思います。アレンジとしては、that’s never going to 〇〇、で決して〇〇しないだろう、ということもできますね。たとえば、that’s never going to work は、それは決してうまくいかないだろう、という意味になります。

さて、本題に戻ります。非暴力コミュニケーションの基本の考え方のひとつは、自己責任だと思います。自分の感情の原因は他人ではなく、自分。自分の行動を決めているのは自分の選択。ニーズを満たすのは、他人ではなく、自分。それがあるからこそ、他人と自分の間に適切な距離を取ることができ、そして、自分のニーズも他人のニーズも対等に尊重して、双方が満たされる手段を探すことができます。

前回までで述べたように、自分の感情の原因は自分であって、それを誘発した他人の行動や発言は刺激でしかありません。同様に、その刺激に反応して、何らかの行動をとったとしたら、それは自分の「選択」であり、そして、どんな場合にも必ず複数の選択肢があるので、「あれしかやりようがなかった」ということはない、ということです。

このことと向き合ってはじめて、前回述べたような、そんな自分を非難する、責めるのではなく「悼む」ことでニーズとつながり、前に向かって進んでいくことができる、ということです。

とはいえ、人間、脳の中の扁桃体が、暴走すると、選択している、という意識もないままに、非合理な行動をとってしまうことがあるのも、また確かだと思います。刺激と反応が起こること、それは自分の選択であることを日頃から意識して、選択している、という自覚を日頃から持ち、何らかの刺激を受けたときに、スペースを作って、行動を選択するには、ある種の訓練が必要かもしれませんね。

それが、マインドフルネス瞑想かもしれませんし、私が他のシリーズで語っている、コネクションプラクティスのスキルである、脳と心臓を同期させる、コヒーランスのテクニックかもしれません。 自分なりに、選択をよりよくできるようにしていくスキルを身に着けていくことも大事ですね。

(文責:中村 真紀)