このシリーズでは、非暴力コミュニケーション(NVC:Nonviolent Communication)を開発した、マーシャル・ローゼンバーグ氏の言葉を、彼の著書(原書)から抜き出し、私なりの解説を加えることで、英語と、非暴力コミュニケーションの双方を学ぶ機会を提供できれば、と思っています。
最近、まだ翻訳されていない、マーシャル・ローゼンバーグの著書、「Speak Peace」の読書会に参加していて、改めて、彼の言葉の持つパワーを感じているところです。
気になるフレーズ、心惹かれるフレーズだらけなので、それらを順番に取り上げていければなあ、と思っています。
Speak Peace原書からの学び⑫:行動を悼むこと
今回からは、今まで見てきた、非暴力コミュニケーション(NVC)のステップ、観察(Observation)、感情(Feeling)、ニーズ(Needs)、リクエスト(Request)が、私たちや他の人にどのような影響、変化を起こすのかをみていきます。
まずは、私たち自身です。人間、誰もが、あんなことを言わなければよかった、あんな行動をしなければよかった、と思うことが、頻繁にあるはずです。人生を生きている限り、こうした経験から逃れることはできません。そのとき、どんなアプローチをすればいいのでしょうか?
悼むこと、嘆くことが大切
非暴力コミュニケーション(NVC)では、そのときに、それを悼むこと、嘆くことが大切だといいます。英語ではmourning と呼んでいます。これは、ちょっと、非暴力コミュニケーション(NVC)独特の語彙だなあと思います。mourning、は、一般的には、死者を悼むこと、喪に服することなどを表す単語です。それを、自分が、もっと違う行動や発言をすればよかったと思うときの行動をあらわす単語として使っています。
私にとって、この考え方は、とても新しく、非暴力コミュニケーション(NVC)を学んで初めて出会った考え方といえます。
When we get in touch with needs of ours that weren’t met by our behavior, I call that mourning-mourning our actions.
私たちが、私たちの行動では満たせなかった私たちのニーズとつながることを、私は悼むこと、私たちの行動を悼むこと、と呼んでいます。
Speak Peace(マーシャル・ローゼンバーグ著)
ここのポイントは、その行動では満たせなかった、自分のニーズとつながる、ということになります。
マーシャルは続けて、こう書いています。
But it’s mourning without blame, mourning without thinking there’s something wrong with us for doing what we did.
しかし、それは、非難のない悼み、われわれがしてしまったことをしたことに、何か間違いがあったと考えない悼み。
Speak Peace(マーシャル・ローゼンバーグ著)
この箇所の前に、人間は自分に対してもいかに、ジャッジメントや非難をしてしまいがちか、ということが描かれています。それは、人生の中で、そのように教育されてきてしまっているからだ、とも。
しかし、そういった非難やジャッジメントなしに、単に、満たされなかったニーズとつながり、それを悼むことで、自分と会話をして、自分を教育するのだと。マーシャルはいいます。悼みのときに感じる感覚をマーシャルはsweet painと呼んでいます。直訳すれば、甘い痛み。これ、どう訳すのがいいのかなあ、と読書会のメンバーでディスカッションしました。「切ない」という感覚に近いと言ってくれた仲間がいます。みなさんは、どう訳しますか?
対照的に、自分へ非難やジャッジをしたときの感情は、落ち込む(depression)、罪悪感(guilty)、恥ずかしい(shame)といった感情です。
そういった感情にさいなまされても、自分の人生をよりよくしていくことは難しい、とマーシャルは考えていると思います。Sweet painを味わいながらも、自分の満たしたいニーズとしっかりつながることで、前向きに、自分の行動をよりよくしていこうというエネルギーが湧くのだと。
この概念を知って以来、私は、自分に何かあったときに、「悼む」時間を大切にするようになりました。
みなさんにも、ぜひ、「悼む」という行動を試してほしいなあと思います。
(文責:中村 真紀)