自分が眼鏡をかけていることを自覚するだけで人生は楽になる

自分が、自分の価値観や思い込みという眼鏡をかけていることを、自覚するだけで、人生はどれだけ楽になることか、と最近痛感している。

先週、参加した、あるセミナーでのできごと。そこでは、それぞれが、「最近ざわっとした、相手のあるできごと」をシェアしあって、それについて、プロセスを行うというものだった。

人は自分の眼鏡を通して物事を見る

そのとき、友人のEさんが、シェアしたのが、「今日、朝、家を出るとき、主人に、終わったらなるべく、早く帰ってきてほしい、と言われてしまい、ああ、また文句を言われてしまったとざわっとした」という事例だった。

その日は、そのセミナーの最終日で、終了後に修了証をいただける予定だったこともあり、参加者はみんな、オシャレをしてきていた。Eさんは、フリースクールのスタッフで、いつもは、子供と一緒に野山をかけまわっても大丈夫なような、カジュアルな恰好をしていることが多いのだが、その日は、とてもシックな美しいワンピースを着ていて、セミナールームに入ってきた途端に、みんなが「おぉっ」と声をあげたほどだった。

なので、Eさんのシェアを聞いたときに、私がまず思ったのは、「だんなさんは、Eさんのあまりの美しさに、嬉しい驚きがあったんだろうな。そして、Eさんが、セミナー出席者の誰か他の男性にとられてはいけない、と心配にもなってしまったのかもしれない。でも、それを、早く帰ってきて、と言ったんではないかな?でもそれを、ストレートに言うのが気恥ずかしくて、ちょっとぶっきらぼうな、文句っぽい言い方になっちゃったんではないかな?というものだった。

もちろん、私はEさんのご主人ではないので、彼の本当の気持ちがどうだったのか、はわからない。ポイントは、同じひとつの発言を見ても、人によって、解釈はまったく違うことがありえる。そして、その裏には、ひとりひとりが、自分の見るもの、聞くものを、今までの自分の体験や価値観、教育などに基づいて作られている、自分の「眼鏡」を通して見ていることだと思う。

自分が眼鏡をかけていることを自覚するだけで人生は楽になる

自分の眼鏡をかけずに、ものごとを「ありのままに見る」なんてことは、たいていの人にはできない。しかし、「自分は眼鏡をかけている。そして自分の眼鏡は他人とは違うことがおおいにある。」ことを自覚するだけで、何かざわっとするようなことがあったとしても、「この解釈は自分の眼鏡のせいかもしれない。この行動をした人は、違う眼鏡で、このことを見ているかもしれない。」と考える余裕ができる。

実際、Eさんのご主人の行動について、私と同じような解釈をした人が、私以外にも結構いた。そして、そのことをEさんに伝えると、Eさんは、とってもびっくりして「そんな風には、まったく考えなかったけれど、それを聞くと、もしかしたら、そういうこともあるのかもしれない、と思うし、なんだか、少しほっとして嬉しくなった。」というコメントをくれた。

同じ日に起きた、別の事例も紹介しよう。このセミナーのマスタートレーナーのひとりは、「ありのまま」で生きる力のとても高い、自己肯定力マックスのような女性Kさんである。

彼女が、休憩時間に、ダンスをしているのを見て、彼女の仲間のひとりが、「あしかショーみたい」というコメントをして、みんなが大爆笑した。そういう風に言われて、彼女がなんと感じたか、というと「みんなに見てもらえて嬉しい!と思って、心から嬉しかった。」というコメントである。

このコメントを聞いて、仰天したのが、参加者のひとり、研修講師をやっている50代男性のUさんである。Uさんの常識によれば、「あしかショー」だなんて、女性に向かって、そんな失礼なコメントなんて、ありえないし、それを聞いてKさんが「がっかりして、落ち込んで、悲しんだ」と思い込んで心配した、というのである。

ところが、Kさんは、落ち込むどころか、大喜び。それを見て、Uさんは、すっかり、混乱してしまい、「自分の今までの常識がひっくり返された!」と言っていました。ことほど左様に、同じ事象を見ても、人によって、見かたや感じ方は、違うのである。

私自身、そのことが、理解できていなかったために、人生、これまで、ひとりで、過剰反応して、いらいらしたり、落ち込んだりしたことの、いかに多かったことか。たとえば、私には、仕事のときなどで、人が、自分と違う意見を言うと、その人が自分を「責めている」と感じてしまう癖があり、そのことで、かなりストレスを感じることが多かった。

しかし、「責めている」と感じるのは、まさに、私の今までの人生ではぐくまれた、私の感じ方の「癖」であって、相手は、単に、違う意見をたんたんと述べているだけ、ということも多々ある。

このことを、知るだけで、自分の人生がどれだけ楽になったことか!

まさに、自分が眼鏡をかけていることを自覚するだけで人生は楽になる、のである。

(文責:中村 真紀)