Speak Peace原書からの学び①:非暴力コミュニケーションの目的

このシリーズでは、非暴力コミュニケーション(NVC)を開発した、マーシャル・ローゼンバーグ氏の言葉を、彼の著書(原書)から抜き出し、私なりの解説を加えることで、英語と、非暴力コミュニケーションの双方を学ぶ機会を提供できれば、と思っています。

最近、まだ翻訳されていない、マーシャル・ローゼンバーグの著書、「Speak Peace」の読書会に参加していて、改めて、彼の言葉の持つパワーを感じているところです。

気になるフレーズ、心惹かれるフレーズだらけなので、それらを順番に取り上げていければなあ、と思っています。

Purpose of NVC:非暴力コミュニケーションの目的

初回の今回は、Speak Peaceの最初のほうで、非暴力コミュニケーション(NVC)の目的に触れている箇所を取り上げたいと思います。

The primary purpose of Nonviolent Communication is to connect with other people in a way that enables giving to take place: compassionate giving.

非暴力コミュニケーションの第一の目的は、与えることが起きるようなやり方で、他の人々つながることだ。慈愛にみちた、与え方で。

Speak Peace(マーシャル・ローゼンバーグ著)

非暴力コミュニケーション(NVC)を学べば学ぶほど、この、つながる(connect)という概念が、大切なことがわかってきます。他の人とつながることができれば、暴力が起きない、という考え方です。

そして、そのためには与える(giving)という考えも同じように大切になってきます。人間は、喜んで他人に与えることができる存在である。それが人間の生来の性質だというのが、マーシャル・ローゼンバーグの思想の根幹にはあります。

では、なぜ、それが妨げられ、暴力や争いが起きるのでしょうか。それは、人間の本来の性質ではなく、支配者による教育の結果によるものだ、というのがマーシャルの考え方でした。そのようにして、刷り込まれてしまった行動のパターンを脱却し、本来の人間の性質である、喜んで与える、与えることで喜びを感じる、に戻ることで、人と人がつながりを取り戻し、争いや暴力のない社会を実現できるのだ、というのが、マーシャルの考えていたことなのでは、と私は思います。

目的理解が非暴力コミュニケーションの本質理解につながる

非暴力コミュニケーション(NVC)というのは、多くの人にとって、今までの行動パターン、思考パターンと違うスキルを身に着けること、まるで、新しい言語を学ぶようなものなのですが、スキルそのものを身に着ける前に、「なんのために」それを身に着けるのか、をしっかり理解することが、とても大事だと思います。

それで、思い出すのが、10年ほど前。私が、初めて、非暴力コミュニケーション(NVC)に関心を持ったときのことです。ちょうど、マーシャルの著書、”Nonviolent Communication: A language of Lifeが初めて日本語に訳され、「NVC 人と人の関係にいのちを吹き込む法」として出版されたときです。ちなみに、この本は、今でも、日本語に訳された唯一のマーシャルの本です。

そのとき、私が、どんな目的で、このスキルを身に着けたかったかというと、当時勤めていた、外資系小売業で、リーダーとしてより成功するために、人を動かすために、効果的なコミュニケーションを学びたい、という非常に薄っぺらいものでした。非暴力コミュニケーション(NVC)の本質を、そのときよりは深く理解するようになった、今、振り返ると本当にお恥ずかしい限りです。そのときは、ご縁がなくて、本を読む以上の学びにはつながらなかったですが、今、考えると、それでよかったのだと思います。本質を見ずに、上っ面のスキルだけ身に着けてしまうことは、それを知らないことよりもこわいことかもしれない、と今ならわかります。

本質を理解すること。目的を理解すること。とても大切です。

(文責:中村 真紀)