Speak Peace原書からの学び⑨:リクエストと要求の違い

このシリーズでは、非暴力コミュニケーション(NVC)を開発した、マーシャル・ローゼンバーグ氏の言葉を、彼の著書(原書)から抜き出し、私なりの解説を加えることで、英語と、非暴力コミュニケーションの双方を学ぶ機会を提供できれば、と思っています。

最近、まだ翻訳されていない、マーシャル・ローゼンバーグの著書、「Speak Peace」の読書会に参加していて、改めて、彼の言葉の持つパワーを感じているところです。

気になるフレーズ、心惹かれるフレーズだらけなので、それらを順番に取り上げていければなあ、と思っています。

リクエストと要求の違い

前回、前々回の7回目・8回目に続いて、今回も「リクエスト」にまつわる箇所をピックアップしました。リクエストは深いですね。

前回までで、リクエストは、Noといわれることを許容するものだ、というお話をしました。それは、なぜなのか、が書いてあるのが、今回選んだ箇所です。

We want people to act on our request only when they’re connected to a kind of divine energy that exists in all of us.

私たちは、彼らが、ある種の、私たちすべてに存在している聖なるエネルギーにつながったときだけ、私たちのリクエストに応えて行動してほしいのです。

Speak Peace(マーシャル・ローゼンバーグ著)

ここに書いてあることも、非暴力コミュニケーション(NVC)の、とても重要な考え方だと思います。ともすれば、私たちは、自分の思い通りに、相手を動かそうとしてしまいます。自分のニーズを満たすために、相手を道具のように扱ってしまいます。

自分のニーズを満たすことは、とても大事なことですが、相手も人間で、そして、感情とニーズを持っていて、そして相手のニーズを満たすことも、自分のニーズを満たすのと同じくらい重要なのだ、というのが、非暴力コミュニケーション(NVC)の基本的な考え方のひとつなのです。

上記に続いて、こうあります。

This divine energy is manifest in the joy we feel in giving to one another.

この聖なるエネルギーは、われわれが、お互いに、与えあうときの喜びの中にあらわれます。

Speak Peace(マーシャル・ローゼンバーグ著)

ちょっと、英語の話を先に。manifestって最近政党の公約などで使われ「マニフェスト」なのかと思ってしまったのですが、よく調べたら、そちらは、manifestoなのですね。どちらの言葉も語源はラテン語だそうです。ここで使われているmanifestは形容詞で、明らかにする、明白に示す、あらわすなどですね。同じmanifestで他動詞、自動詞、名詞もあります。産業廃棄物の書類も、カタカナで「マニフェスト」といいますが、こちらは、manifestですね。今回、改めて調べてみて、違いがわかってなかったことがわかりました(笑)

さて、内容に戻ります。

これまでの回でも、何回か触れましたが、マーシャルは、人はもともとは、お互い与えあうことに喜びを感じる生き物だと信じています。それが、争ったり、暴力をふるったりしてしまうのは、そのように教育されてきてしまったからにすぎない、と。

そして、そのもともとの、与えあうことを喜ぶエネルギーを、ここでいうdivine energy(聖なるエネルギー)と呼んで、このエネルギーからくる行動しか、しないほうがいいと考えているのですね。

人はついつい、自分のニーズを満たすために、相手を動かそうとしてしまいます。しかし、相手が、この聖なるエネルギーから、行動しないなら、仮に表面上、自分のリクエスト(なのか要求なのか)に応えてくれているようにみえても、のちのち、大きなつけを払うことになる、といっています。

この感じ、みなさんに伝わりますかね?たとえば、でいうと。つきあっている彼氏がいて、好きだからいつも一緒にいてほしい、って押し付けていると、だんだん、相手がいやになって、逃げていってしまうような。そんな感じですかね(笑)

いつも、お互いが、聖なるエネルギーから、相手のために喜んで何かをしあっている状態、そんな状態が作れれば、人と人がつながり、平和な世界が作れる。それが非暴力コミュニケーション(NVC)の世界観といってもいいと思います。

確かに、それは、全然簡単ではないのですが。そんなの理想だよ、と片付けてしまうか。なんとか、その世界に近づくために、日々、試行錯誤するか。私は、なんとかその世界に近づくために、日々試行錯誤する人生を選びたいな、と思っています。

(文責:中村 真紀)