Speak Peace原書からの学び⑧:リクエストと要求の違い

このシリーズでは、非暴力コミュニケーション(NVC)を開発した、マーシャル・ローゼンバーグ氏の言葉を、彼の著書(原書)から抜き出し、私なりの解説を加えることで、英語と、非暴力コミュニケーションの双方を学ぶ機会を提供できれば、と思っています。

最近、まだ翻訳されていない、マーシャル・ローゼンバーグの著書、「Speak Peace」の読書会に参加していて、改めて、彼の言葉の持つパワーを感じているところです。

気になるフレーズ、心惹かれるフレーズだらけなので、それらを順番に取り上げていければなあ、と思っています。

リクエストと要求の違い

前回の7回目に続いて、今回も「リクエスト」にまつわる箇所をピックアップしました。

前回も書きましたが、非暴力コミュニケーション(NVC)のリクエストの要件を満たすには、いくつかの条件があります。肯定的な言い方であること、具体的で実現可能なこと、そして、相手のNoを許容すること。

今回は、その3番目の条件についての記述です。

What determines the difference between a request and a demand is how we treat people when they don’t respond to our request.

リクエストと要求の違いは、相手が、私達のリクエストに答えなかったときにきまります。

Speak Peace(マーシャル・ローゼンバーグ著)

マーシャルは、リクエストが要求かの違いは、言い方、言葉遣いが、丁寧かどうか、感じがよいかどうかとは全く関係ないと言っています。そして、そのお願いが出された時点では、それがリクエストなのか要求なのかの区別もつかないといっています。その区別は、まさに、相手が「NO」といったときに、わかるのだ、と。

これに関して、マーシャルはご自身の息子さんとの面白いやりとりを開示しています。あるとき、彼が息子さんに、「君のコートをクローゼットに掛けてくれないかな?」と頼んだところ、息子さんが、「僕が生まれる前は、誰が君の奴隷だったの?」と聞いた、というエピソードです。面白いのは、この頼む文章は、英語では” Would you please hang up your coat in the closet?” と書かれています。かなり、丁寧な表現で、子供ではなく、他人相手にも丁寧に何かを頼む” Would you please “ を使っています。むしろ、気持ち悪いくらいですね。しかし、息子さんは、敏感に、この丁寧な物言いの背後にある、マーシャルの要求的態度、つまり、「親の言うことを息子は聞いてあたり前」を感じとり、反発をしてきた、というわけです。

そう考えると、私の人生で、今まで、ちゃんと他の人に対して「リクエスト」をしてきただろうか?と考えさせられます。何かを頼むときは、「相手がやってくれて当然」という考え方を持っていなかっただろうか?あるいは、断られたら、自分が否定されたように傷ついていなかっただろうか?それを恐れると、今度は、何かリクエストがあってもしない、ということになります。それはそれで、自分に対する抑圧になってしまい、どこかで爆発してしまう火種をためていくようなことになってしまいます。

自分の感情、ニーズとつながり、それを満たすために、リクエストをする。でも、相手の感情、ニーズも尊重し、リクエストは断れて当たり前と思っている。断られたら、淡々と、自分のニーズを満たす、他の手段を考える。こんなことがさらっとできたら素敵だな、と思っていますが、これはなかなか難易度が高いです。だからこそ、非暴力コミュニケーション(NVC)を一生学び続けようと思うわけなのですが。

(文責:中村 真紀)