Speak Peace原書からの学び⑦:罰を与えても勝ち目はない

このシリーズでは、非暴力コミュニケーション(NVC)を開発した、マーシャル・ローゼンバーグ氏の言葉を、彼の著書(原書)から抜き出し、私なりの解説を加えることで、英語と、非暴力コミュニケーションの双方を学ぶ機会を提供できれば、と思っています。

最近、まだ翻訳されていない、マーシャル・ローゼンバーグの著書、「Speak Peace」の読書会に参加していて、改めて、彼の言葉の持つパワーを感じているところです。

気になるフレーズ、心惹かれるフレーズだらけなので、それらを順番に取り上げていければなあ、と思っています。

罰を与えても勝ち目はない

これまでの6回を通じて、非暴力コミュニケーション(NVC)の目的、大事な2つの問い、観察、そして感情、ニーズについてみてきました。今回は「リクエスト」についてみていきましょう。

ちょっと、復習です。大事な2つの問いとは、What’s alive in us? (何が、私たちの中でいきいきしていますか?)と、What can we do to make life more wonderful? (人生をもっと素晴らしくするために、私たちは、何ができますか?)でしたね。

最初の問いで感情に気づき、そしてその感情がさししめす、私たちが大事にしたい「ニーズ」を特定します。そして、そのニーズを満たすために、何ができるのか?が、2つめの問いになるわけです。非暴力コミュニケーションでは、ニーズは人間誰もが持っている普遍的なもので、そのニーズを満たす手段は無数にあると考えます。自分で満たすことも、他の人にリクエストすることも可能だと考えます。

その、リクエストについての記述の中に、こんな一節があります。

Punishment is a losing game.

罰を与えても、勝ち目はありません。

Speak Peace(マーシャル・ローゼンバーグ著)

そもそも、非暴力コミュニケーション(NVC)で、リクエストをするときには、いくつかの原則があります。肯定的な言葉を使うこと。(つまり、何かをやめてくださいとお願いするのではなく、何かをしてくださいとお願いすること)具体的で実行可能なアクションをお願いすること。(たとえば、部屋をきれいにしてください。では、きれいの定義が人によって違うので、リクエストとしては成り立っていないと考えます。床にある、おもちゃを棚にしまってください、ならリクエストになります)。そして、リクエストにNoといわれる可能性があることを受け入れていること。

リクエストも、シンプルですが、具体的に実行するとなると、とても、難しいステップです。

罰を与えても勝ち目はありません。というのは、人にお願いをして、実行をしてもらいたいときに、罰という恐怖で人を動かしても、決してうまくいきませんよ、ということを言っています。もしかして、そのやり方で、その場では、いやいやながらも、やってほしいことをやってくれたとしても、その人が喜びからやらなかったのならば、その“つけ”は、必ずあとからまわってくるということをいっています。

ただ、この罰を与えるやり方、というのも、あまりに世間で一般的に行われていますよね。犯罪防止もそうです。学校での教育にもしばしばみられます。ありとあらゆる組織でルールを作るやり方も、そうだといえます。

なので、そのやり方には、勝ち目がありませんよ、と言われても、急にはぴんとこない方もたくさんいらっしゃるのかなあ、と思います。でも、この考え方は、非暴力コミュニケーション(NVC)の根幹をなしています。

どういう意味なのか、これを機会に、ちょっと立ち止まって考えてみてください。

これについては、この後も何度でも触れていきますね。今回はこの辺で。

(文責:中村 真紀)