Speak Peace原書からの学び⑥:自分のニーズとつながる

このシリーズでは、非暴力コミュニケーション(NVC)を開発した、マーシャル・ローゼンバーグ氏の言葉を、彼の著書(原書)から抜き出し、私なりの解説を加えることで、英語と、非暴力コミュニケーションの双方を学ぶ機会を提供できれば、と思っています。

最近、まだ翻訳されていない、マーシャル・ローゼンバーグの著書、「Speak Peace」の読書会に参加していて、改めて、彼の言葉の持つパワーを感じているところです。

気になるフレーズ、心惹かれるフレーズだらけなので、それらを順番に取り上げていければなあ、と思っています。

自分のニーズとつながっている人の問題

これまでの5回を通じて、非暴力コミュニケーション(NVC)の目的、大事な2つの問い、観察、そして感情についてみてきました。今回はニーズについて触れている箇所です。

今回は、あえて、少し過激な表現を選びました。

The problem with people who are in touch with their needs is that they do not make good slaves.

自分のニーズとつながっている人の問題は、彼らは良い奴隷を作らない、ということです。

Speak Peace(マーシャル・ローゼンバーグ著)

まずは、英語と訳について少し触れます。” in touch with” は、接触してとか、連絡をとりあって、とか、触れ合ってというような意味で、人と人が連絡を取り合うときなんかにも使われるフレーズです。今回は、自分とニーズとの関係をあらわしているので、ちょっと意訳かもしれませんが、「つながる」という言葉を敢えて使ってみました。

さて、内容です。このフレーズは、マーシャルの考え方の根幹のひとつをよく表していると思っています。彼は、人間は、生まれつき、人とつながりたい。人のために何かしたいという清らかな願いとエネルギーを持っている生き物であると考えています。それなのに、なぜ、争ったり、暴力をふるったりするのか。それは、長い人類の歴史の中で、支配者が、大衆を支配しやすいように、教育・洗脳を行ってきた結果だ、と考えています。

人々が自分のニーズに気づき、自分のニーズにつながると、自分らしさ、を追求し、権力のある人に指示されたことに、従わず、自分の内側、自分の魂につながって生きるようになっていくと思います。それは、その個人にとっては、とても大切なことなのですが、支配をしたい側からみれば、「都合の悪い人間」になる可能性があります。

これは、国王と国民とか政府と大衆といったレベルにまでいかなくても、ちょっと前まで、私の所属していた、企業社会においても、よく発生していることかもしれないなあ、と思います。

伝統的な企業社会の中では、基本的には、上位役職者が、部下に対して、「業務指示」「業務命令」を出す。基本的には、それに対して、「部下」は断れない。という構図で組織が成り立っています。これが前提となっている中で、たとえば、部下が「私のニーズとつながった結果、あなたの指示命令には従えません。」と言い出したらどうなるか。みんながみんなそんなことを言い出したら、組織は成り立たないよ、ということになりかねません。

これが、組織と個が根本的に抱えている矛盾だなあと私は感じます。もちろん、現代の組織は洗練されているので、ここまであからさまなことが毎日起きているわけではありません。また、従業員のやる気やモチベーションをあげるための様々な工夫もされていることでしょう。

しかし、最後の最後、この論理が厳然としてある、ということは否めないと思います。私自身、経営者をやっていながらも、何回か、大きな局面で、企業の意志と自分の個人としての感情やニーズとの間に板挟みになりました。今回、独立をした本質は、実は、このことへの折り合いが、自分の中でつかなくなってきた、ということもあると思います。

いきなり、話しが大きくなりましたね。私自身としても、このことについては、まだきれいに整理もできていないし、自分の考えはこうです、と論理立てて話せる段階にもないことを、正直に打ち明けておきますね。

ただ、私は、「自分のニーズとつながる」ということを大切にしよう、ということは決めました。そして、他の人のニーズも同じように大切にしたいと思っています。それは、必ず両立する、というのが非暴力コミュニケーション(NVC)の考え方です。それは、簡単なことではないのですが、その道を探っていきたい、というのが、私が、非暴力コミュニケーション(NVC)を一生学んで実践していきたい理由です。

(文責:中村 真紀)