Speak Peace原書からの学び④:間違っていると伝える悲劇

このシリーズでは、非暴力コミュニケーション(NVC)を開発した、マーシャル・ローゼンバーグ氏の言葉を、彼の著書(原書)から抜き出し、私なりの解説を加えることで、英語と、非暴力コミュニケーションの双方を学ぶ機会を提供できれば、と思っています。

最近、まだ翻訳されていない、マーシャル・ローゼンバーグの著書、「Speak Peace」の読書会に参加していて、改めて、彼の言葉の持つパワーを感じているところです。

気になるフレーズ、心惹かれるフレーズだらけなので、それらを順番に取り上げていければなあ、と思っています。

何が間違っていると伝える悲劇

マーシャルは、非暴力コミュニケーション(NVC)には、2つの大事な問いがあると書いていることは、過去2回でお伝えしました。ひとつは、What’s alive in us?(何が私たちの中でいきいきしていますか?)。もうひとつは、What can we do to make life more wonderful?

(人生をもっと素晴らしくするために、私たちは、何ができますか?)です。そして、これらの問いは、それぞれ、私達の「感情」と「ニーズ」を特定するための問いだ、ということもお伝えしました。

今回取り上げるのは、観察です。マーシャルは、最初の問い、「何が私たちの中でいきいきしていますか?」に答えるためには、他の人があなたにした、具体的な行動に(あなたがそれを好んだものであれ、好まないものであれ)、判断を交えずに描写する必要があるといっています。これが非暴力コミュニケーション(NVC)の中の重要な概念「観察」です。

なぜ、観察が大事なのかを描写した箇所を、今回は取り上げます。

Telling people what’s wrong with them is suicidal and tragic-and besides, it’s ineffective.

人々に、彼らの何が間違っているのかを伝えることは、自滅的であり、悲劇的です。それにもまして、効果がまったくありません。

We don’t want these judgments to mix in when we try to tell people what these done that we don’t like.

私たちは、人々に、自分の好まない、彼らが行ったことを伝える際に、これらのジャッジメント(判断)を混ぜることを望まないのです。

Speak Peace(マーシャル・ローゼンバーグ著)

非暴力コミュニケーション(NVC)の中で、「観察」というステップが大事なことは、基本の中の基本ともいえることなので、知ってはいる。でも、このマーシャルの原文を読んだときに、彼がsuicidal(自滅的、自殺的)とかtragi(悲劇的)という、おおげさな単語を使って、伝えたいことはなんなのだろう、ということを改めて考えさせられました。

そして、振り返ってみれば、私の人生、この非暴力コミュニケーション(NVC)に出会うまでは、他の人に「あなたが間違っている」と叫び続けてきた、人生といっても過言ではないのです。無自覚に、自分の「考え」が「正しい」と信じ、自分と違う「考え」の人に会うと、「私が正しいのだよ。あなたが間違っているよ」と言い方はともあれ、叫んでいました。

それでは、人とつながれるわけがないのですよね。まさに、自滅的で、悲劇的な毎日だったのかもしれません。

価値判断を交えずに観察する

誰かの発言や、行動に、に腹が立ったり、ざわざわした気持ちになったら、まず、彼らが言ったこと、したことは、何かを評価判断を交えずに、「観察」で切り取るという練習をしてみたら、いいと思います。描写を実際文にしてみて、そこに、評価判断が一言も入っていないか。自分とは違う第三者がみても、必ず理解できて、伝わる言葉になっているかを確認してみるといいと思います。

これ、ほんのささいなことのようにみえても、なかなかできないんですよね。たとえば、私の例でいうと、「おかあさんはおしゃべりだ」とよく思ってしまいます。でも、万人が認めるおしゃべりの定義は、何でしょうか?母のどの具体的な行動をもって、私は、彼女を「おしゃべり」と決めつけているのでしょうか?

これ、なかなか難しいのですよ。

NVC(非暴力コミュニケーション)はとても深いものですが、まずは、この観察を練習するだけでも、かなり世界が違ってみえてきます。

(文責:中村 真紀)