タフな自分はどこからきたのか?

ご縁あって、多様な働き方・生き方を応援&追求するコミュニティ「キャリアバラエティ」(https://www.facebook.com/career.variety/)のサイト掲載用のインタビューを受け、その後また、キャリアについて語る同コミュニティ主催のイベント「キャリバラwith SALT」でお話させてもらう機会をいただいた。

若いころの私は「キャリア」ということに、とても関心があり、グロービス(https://globis.co.jp/)の仲間たちと「キャリア研究会」なるものを立ち上げて、どうやったらよりよいキャリアを作れるかというディスカッションに夢中になっていた。実際、外資系企業の中でマネジャーからダイレクター、シニアダイレクター、バイスプレジデント、シニアバイスプレジデントと肩書があがっていくことが嬉しかったし、チーフマーチャンダイジングオフィサー(CMO/最高商品責任者)というタイトルをいただいたときには、「これは夢か!」と思うくらい嬉しかったのを思い出す。

そのあたりが、私の無邪気な夢の絶頂で、その後約10年の外資系企業における経営者ライフでは、肩書の裏にある苦労や辛酸を舐めまくり、一筋縄ではいかぬ人生の奥深さを知ることになる。過酷な日々だったが、それが今の私を作ったことも事実だ。そんなこんなで、ここまで来た今の私は、「キャリア」という言葉に、もはやあまり関心がなくなっている。

「キャリバラwith SALT」では15人ほどを前に、以前にサイト用にインタビューいただいたのとほぼ同じ内容を、質疑応答の形で話させてもらった。とはいえ、前のインタビューからは既に数ケ月前が経っており、そのとき、自分が何を話したか、正直、あまり覚えていない。特に事前準備もしていなかったので、同じような質問に対して、その場で浮かんだことを話した。インタビュアーからは、「時と場所で、お答えも少し変わってくるんですね」というコメントをいただいたが、きっとどちらも私の正直な気持ちなのだと思っている。

子供時代、中高、大学、キャリア初期から転職、US研修時代を経た後の人生といったことについて順番に質問を受けて話をした。そのことで呼び覚まされるものがあったようだ。翌日になっても過去のことをなんとなくぼんやり思い返している中でいくつか気づいたことがある。

イベント最後の質問タイムで、「逆境に強い(メンタルも体力も)タイプにお見受けしますがなぜですか?」また、別の方からは「ご両親はどういう接し方をされたのですか?」と問われた。

どちらも生まれ育ちに絡んでいる質問に思えた。体力、メンタルが強いとしたら、それは両親から受け継いだ遺伝子と、食に気を付けて育ててくれたことによるなあと思い、そう回答した。また、両親の接し方については、「めちゃくちゃ厳しく育てられた。厳しく育てられると親の言いなりになったという方にも会うが、私はずっとその厳しさに反抗して押し返していた。なぜそんなことができたのかと問われれば、そういう遺伝子、人格だからだとしか説明ができない」というような答えをした。

私は何十年も、そうだと思い込んできたし、いろいろな場面でいろいろな人にそのように語ってきた。

だが、イベントの翌日、過去をぼんやりと思い返していたときに、「本当にそうなのか?」という疑問が湧いてきた。

ひとつ浮かんできたのは、「タフな自分」というのは、自分の人格のある一面でしかないのではないか、ということ。そしてその一面は、何らかの理由で、これまで、表に立つというか、前面に出ていた部分なのだと思う。でも、私の人格すべてがタフなわけではない。タフな私の裏には、傷つきやすく、弱くてもろい私もいたような気がするのだ。だが、そんな弱い自分が前面に出てしまったら、人生はますますしんどくなる。だから、タフな部分が、そんな弱い自分を守るために、常に前面に出ていたのではなかろうか?

そして、両親との関係。私を厳しくしつけようとする両親に対して全力で「押し返そう」とし続けていたのは、そのとおり。でも、それはなぜなのか。それは、「こうあってほしい」という両親の願いや想いに対して「今のままの私を受け入れてほしい」という強い願いがあったからなのかもしれない。

私の人格は、「私は、私のままでも大丈夫」ということを両親に知らせたいという一心で作られてきたのかもしれない。「私のままでも生きているよ、私のままでもキャリアがうまくいっているよ」その奥には、「だからありのままの私をそのまま受け入れて」という気持ちあったと思う。

今さらながらの気づきに愕然とする。そんな想いは、とっくに卒業したつもりだったけど、まだ心のどこかにそんなわだかまりがあるのを確かに感じたのだ。

でも、それが悪いってわけじゃないよな。そんな自分もいるよね。だって、長年それでがんばってきたのだものね。深呼吸して、私自身に話しかけてみる。同時に、若い両親が最初の子供を一生懸命育ててくれようとした姿にも思いを馳せる。

みんな一生懸命生きているんだよね。そのことが、前よりは少しだけ理解できるようになってきた。

歳を取るのも悪くない。

<文責:株式会社まんま代表 中村真紀>